元婚約者の話

今日も元気にサークルクラッシュ!くらいの勢いで悪気なく人間関係を振り回してしまうとんでも物件の私ですが、何と私には数ヶ月前まで婚約者がいたのです。たまに私のツイートにも上がる彼について話していこうと思います、思い出の昇華も込めて。

彼とは意思疎通が出来る程度の精神疾患者にはありがちの精神科病棟内で出会いました。
その時は私は21歳、彼は39歳でした(何とまあ)

年の割に容姿が整っていた彼を当時の私は「30歳くらいかな~この人。たまに気にかけてくれるけど笑顔が可愛くて優しいな~。」くらいの気持ちで見ていました。当時の私に一言だけ声をかけられるとしたら「馬鹿は何も考えず黙々と治療しろ」です。

彼のことを何となく視界に入れるようになってから私からLINE交換を持ちかけました。これが運の尽きでしたね。

その数週間後、精神科の浮浪者のような人間を蹴りあげていたら彼から着信がありました。

彼「今どこにいるん?」
私「病院」
彼「会いに行ってもいい?」
私「ええよ✋」

私に下心なく会いに来てくれた1番最初の異性が彼でした。私はその時既に21でいい歳した大人だったのにそんな経験すらなかったのでとても嬉しく思ったのを覚えています。彼に昔「何であの時会いに来てくれたの?」と聞いたら「ただ苧ちゃんの顔を見たいと思って」と言っていたのをよく覚えています。

その後彼の家に私から行ってみたいと言い彼の家に押しかけました。彼は「ちょっと待ってて!急いで片付けるから!恥ずかしいし!」と本当に大慌てで片付けてくれていて本当に嬉しく思いながら玄関で待っていました(21まで異性に片付いた部屋に招かれたことないの本当に可哀想だしその程度の価値なんだと思う。)

「片付けた!」、彼の表情を知り尽くした今になって思えば少し緊張した顔で彼は部屋に迎えてくれました。入室してまず心の中で一言。

(汚い。)

部屋の四隅に被った埃、というか部屋全体に薄く被った埃。エアコンに張り付いて取れなくなった蜘蛛の巣。ゴミはないし物は片付けられてると言ったら片付けられてるけどそもそもの生活力は一瞬で理解した。確か「へえ~…」とか言いながら入室した気がする。

彼は「可愛い」「苧ちゃんは可愛い」としきりに言ってくれた。そして口説き文句として陳腐すぎる可愛いという言葉で何と私は一瞬で恋してしまった。本当アホなのですっぴんで浮浪者みたいな患者を蹴りあげる女に可愛いと言ってくれるなんて…!と感激してしまったのだ。

そして会って2時間後、交際の約束をした。


それからは彼に少女漫画のような言葉を言ってもらう毎日だった。「可愛い」「愛してるよ」「苧ちゃんみたいな子と結婚したら幸せだよ」。今思い返せば39歳の男がこんな言葉で18年下の女をつなぎとめられるならいくらでも言っていただろうと思うのに子供の頃ちゃおの読みすぎて全て真に受けてしまっていた。本当に情けない。情けないけどもそんな彼にガチ恋して私も甘えてお姫様気分でゴミ屋敷にほぼ毎日居座っていた。
“ここをお城だと勘違いしてゴミ屋敷に居座るゴミ姫”の誕生だった。

ゴミ姫はもう完全に彼のお嫁さんになるつもりだった。ゴミ屋敷のゴミの1つとして収まるつもりだったのだ。当時の私に言い分を聞けるなら「好きだって言ってくれてるから」と偏差値3くらいのことしか返答しないと思う。

それからまもなくだった。彼は彼なりに私との結婚を真剣に考えてくれていたのだと思う。重度の精神疾患を持つ彼にとって18歳も年下の嫁・親の反対・就労・子供を産むか産まないか、産んだとして養えるか…彼は一瞬でストレスがピークに達した。そして私が気に入らないことをしていたら当たり散らすことでしかストレス発散することが出来なくなった。

異性と連絡していたら別れ話を持ち出す、異性に挨拶したら浮気の疑惑をかける、異性の連絡先は目の前で消させる、「お前には俺に尽くす気持ちが足らない」とヒステリーを起こす、定期的なスマホのチェック、痛みが出たので拒んでも無理矢理始まり泣きながら終えた性行為、金銭面が厳しくなったら10000円を要求、デート代は全て私が奢るのが当たり前でありがとうの言葉もなし。

その頃は「こうすればこの人の状態が良くなってくれるなら」、それだけ考えて何もかも差し出していた。体もお金も。

確か6月頃だと思う。ふと、「私が何もかも差し出して救える人だったらきっと主治医や健常者だったと話に聞く元カノにとっくに救われてたのでは?」とやっと気付いてしまった。やっと自分の異常事態を把握してきて「何か逃げ道は、でも友達に話しても頑張れよしか言われないし逃げ道はここじゃないかも」と慌ててスマホを開いた。現代のモラハラ現場にインターネットが普及していて本当に良かったと今心の底から思う。これが明治時代とかだったら終わっていた。

疑問を抱いた日にその日のうちに“苧環”さんは誕生した。モラハラを受けていた時代はメンヘラや精神疾患者が本当に憎くなってしまっていたのでまずはメンヘラを殺す勢いで叩いていた。「何がメンヘラだ、甘えるな。死ね。アウシュビッツに行け。」とか言っていたような気がする。ここで彼へのストレスを撒き散らしてまた彼の元へ戻って奉仕活動ができるならそれでいいと思ってとにかくメンヘラを叩いていた。自分が半年後立派なメンヘラクソ女になってるとも知らず。

それからまもなく、媒体を通して実質彼を叩く自分と彼を何とかして救いたいと思ってる解離性人格障害かのような真逆の二面性と仕事帰りに彼を救いながらのハードな毎日に耐えきれなくなり、私は間もなく入院した。その頃に頑固な睡眠障害も発症し以降数ヶ月後眠剤を飲んでも何をどうしても眠れなくもなった。


そして2週間の入院後やっと某会に辿り着いた。

某会に辿り着いて改めて自分に起きていた事態を確認し少しずつ少しずつ、彼への癒着を仲間の手を借りて剥がしていった。
もう2度と出来ないと思っていた仕事にも、最近やっと復帰した。

彼から受け継いでしまった悪い癖や歪んでしまった考え方も少しづつ強制していっているし、最近はやっとたまに生きているって案外楽しいなと思える瞬間もできてきた。

悪い男で悩んでる貴女、これを見てわかってくれたと思うけども悪い男に魅力を感じる貴女も充分ダメかも…と気付いてくれたら幸いです。